京都の魅力

古寺巡礼、絢爛たる祭、歴史と文学のあとを訪ねる散歩みち

社寺マニアにピッタリの路

 南禅寺から知恩院へ抜けるには、岡崎経由と粟田口経由の2通りある。前者は疏水の流れにそって動物園、美術館、平安神官を横目に眺めながら、神宮道を南下する。後者は南禅寺境内をインクライン下のトンネルから京津国道に出たら、華頂山北麓の山道を縫って仏光寺本廟や良恩寺をさぐり、青蓮院の横手へ出る。このガイドは社寺マニア向きの後者を主とする。
 南禅寺へは、市電だと天王町、市バスは法勝寺町、京津電車は蹴上で下車後、歩くほかない。この寺は臨済宗南禅寺派大本山であり、中世以降衰えたとはいえ、なお12の塔頭と無数の国宝重文殿舎を持つ壮大な大寺院。とくに五右衛門「楼門五三桐」で名高い重文三門は日本一の門だ。境内聴松院の湯豆腐は一式で400円位。
 境内を思いきり東北へ進み、トンネルを抜けると京津間の国道1号線へ出る。トンネルの上は、今は使われない疏水インクラインだ。昔はこれで舟を引き上げ、京津間に舟運を通した。南側には都ホテルの大ビルが華頂山中腹にそびえる。
 西へ約200mほど山の中へはいると、粟田神社がある。周囲は都心と思えぬ静寂境だ。すぐ東が浄土宗良恩寺。昔は裏‐が華頂山火葬場で、ここで引導渡ししたとかで引導地蔵というのがある。寺宝の手取釜には大閤ゆかりの逸話がある。東隣は仏光寺本廟。元禄年間の創建だが、本山から移した親鸞上人の遺骨をまつる舎利塔がある。
 粟田神社から西へ回り、更に山へはいると天台宗青蓮院派の寺である尊勝院がある。藤原末期の創建で仏像が多い。参詣人もなく静寂そのもので、境内からの眺望はすばらしい。岡崎から吉田、北白川までを一望に納め、黒谷の塔と相対する。そのまま西へ地続きに青蓮院がある。この寺は名にしおう天台宗最高の門跡寺院で夜の観光バスも停車する。ここで初めて道は一般観光コースに戻る。さらに南隣の知恩院から円山道は京の観光銀座と呼ばれているところだ。